奈良美智は歴史をどう変えたのか 

奈良美智（なら よしとも）は、日本を代表する画家、彫刻家です。1959年、青森県弘前市に生まれ、2人の兄とともに田舎町で育ちます。祖父は神主で、その精神的な教えも創作活動に影響を与えています。  

奈良は、本州にある米軍ラジオ局 FEN（Far East Network、米軍極東放送網）を通じて初めて、彼の幼少期から創造性と芸術的想像力を刺激し続けている西洋音楽に触れます。そして、80年代後半から90年代前半にかけて、ドイツの名門デュッセルドルフ芸術アカデミーに留学し、ドイツ人画家A.R.ペンク（A.R. Penck）の指導のもとで学び、日本や西洋のサブカルチャーをファインアートに結合させるような表現をするようになります。

彼は、パステルカラーで描かれた大きな目の子供や動物を描いた作品で最もよく知られ、一見シンプルなこのモチーフは、彼の作品を通して繰り返し採用されています。この “大きな頭の女の子” たちは、しばしばナイフや小さな武器を持っていて、ダークなエッジを持つカワイイを表現しています。これは、奈良の作品全体に漂う自由奔放でパンクな姿勢に由来するものであります。 

「Twins I」に登場するパンクな子どもは、日本の伝統的な演劇のキャラクターである “お多福” の陽気で明るい側面を、いたずら好きで不思議な雰囲気で表現しています。美術評論家はこの作品について、「日本は古くからの社会的慣習に支配された柔軟性に欠ける社会であるという認識を払拭する事に役立った」と評しています。 

彼の描くどこか悲しく攻撃的な表情を浮かべる子どもや生き物たちは、普遍的な真実を語り、相反する感情や不安を表現しています。そして、若者たちの感情は、重要なメッセージを伝えるための力強い表現方法として用いられています。彼にとって初のファッションとのコラボレーションである2021年春夏の「Yoshitomo Nara × Stella McCartney ユニセックス カプセル」では、ファッションが重要な問題に対してのプラットフォームとなり、その声を代弁しました。ニットやジャージ、アウターウェアに描かれた、力強いスローガンは、奈良の作品をリードし続ける若々しい反骨精神を表し、時代を変える新しい世代を結束させます。

奈良美智の作品は、1995年以来40回以上の個展で発表され、国内外の多くの美術館に作品が収蔵されています。しかし、2011年の福島第一原子力発電所の事故により、奈良のスタイルは方向転換を余儀なくされました。  

震災は奈良が育った東北地方にも直撃しました。彼は、テレビに映し出される被災地の光景に、絵を描くことの無力さを感じて制作ができなくなりました。以降、彼は絵を描くことよりも、粘土に直接触って制作する巨大な彫刻の制以降、彼は絵を描くことよりも、粘土に直接触って制作する巨大な彫刻の制作に没頭し、それが美術への復帰のリハビリテーションになりました。約1年後、彼は再び絵筆を取るようになりましたが、そこから生まれてくる絵は以前にはなかった優しさを備えるものになっています。現在の奈良の作品は反抗心や怒りだけでなく、奥底に愛情を持つ肖像画となっています。